― 広間 ―
[足取りはふらついてはいないけれど、息は酒臭い。
ネリーとはタイミングがずれたか、顔をあわすことはなく。
広間に足を踏み入れれば、執事が少女に毛布をかけおわったところだったろうか。
その場に薬師の娘もいるようなら、眠っている少女を起こさないように手を上げて挨拶にかえる。
ニーナのことは村で聞いたことがあった。
とはいえ、それは薬師が孤児を拾って育てていたけれど、その子も年頃になったとか、そんな程度の噂話。
顔はあわせていたかどうか……酔っ払っているときにあっていたら、すこし記憶はあやしかったかもしれない]