─ 二階 物置 ─
[ふる、と軽く首を振った後、姉の部屋を出て。
足を向けるのは、物置の方。
個室よりも一回りほど小さな空間には、雑多に品物が詰め込まれ。
それに埋もれるように、古びたアップライトが眠っていた]
……音、出るのかこれ。
[明らかに放置されていたとわかるそれに苦笑しつつ、周囲を片付けて埃を払う。
舞い散る埃に後で風呂に入るようか、などと思いながらも鍵盤の蓋を開き、適当な木箱を椅子代わりに据えて、白と黒の上に指を落とす。
返ってくるのは、甲高い音、一つ。
弾けなくはない、とわかると、得意曲のひとつである子守唄の旋律をゆるり、紡ぎ出し、そして]