[ただ、賑わいのうちにちらりと、
エーリッヒに気遣わしげな視線を向けてしまったのは、
当人に気づかれたかどうか。
屋敷の外の天候はますます荒れて、
遠い昔の雪嵐の夜を思い起こさせる。
当時、既に16となっていたクロエは、
だからほんの少し、大人たちから事情を聞けた。
ユリアンにエーリッヒ、そしてミリィ。
少し年の離れた彼らの面倒を見ているのだと言えば
当時聞こえは良かったが、実質は引っ張りまわしていた感もある。
きょうだいのいないクロエには、彼らが弟妹のようでもあった。
12年前にエーリッヒがいなくなってから、
自然と彼らと森を駆けて遊ぶことはなくなってしまったけれど]