−小屋−
[眠りは浅くても、朝は来る。
光を遮る物のない窓から入る朝日に目を眇め、身を起こした。
朝食に久し振りのまともな料理を口にする傍ら、置かれた荷物に目をやる。昨日もそこにあった、アヤメの草の籠。主なき家に運ぶのも躊躇われて、結局は小屋へ持ち帰ったのだが。]
………兎もカレンに渡し損ねたな。後で行くか。
[結界樹に向かう途中、ロザリンドから伝え聞いた経緯では、アヤメだけでなく、リディアとジョエルを感知したエリカも治療院に居るという。]
……クローディアの時、あの娘は虚に遠いと言っていたな。
恐らくジョエルは違うだろうが、リディアはどうか…聞く価値はあるか。
[最後の一口を丸呑みして立ち上がり、手早く片付ける。
紫紺の翼を雲海へと投げ、大きな弧を描き蒼穹へ。]