―朝・自宅―
[ゆっくりと、瞼を開く。
自宅の天井…ベッドの真上の見慣れた光景だった。]
――夢、か。
[久々に彼の夢を見た。
自分を人狼だと語り、頑なに集落に住まうことを拒んだ男。
彼と出会い、別れたその日からしばらく経って、「遠くの集落で人狼が出た」との噂を耳にした。
単なる噂だ。本当は狼や熊辺りの仕業かもしれない。
そう思いながらも、無意識に…脚に残る傷に手が伸びた。
通りすがりの旅人にからかわれただけ。
自分に言い聞かせようとするが、彼の哀しい笑顔が、…顔も思い出せないくせに胸を締め付けるのだ。]