─昨日夕方─
[旅籠を出ようとしたところで琉璃から送って行くと声をかけられ]
……ご、めん…あり、がと……。
[また咳が出ていたのか掠れた声で礼を言う。また心配をかけてしまった、と心の中で落ち込む。咳の苦しさと、その心情から眉根に皺が寄った。
声をかけてくれた周囲の者に、「大、丈夫」と弱々しげながらも笑みを向けてから、琉璃に付き添われ自宅へと戻った。
見た目小柄な女性同士であったために、治安の悪い場所では襲われかねない組み合わせだったろうが、ここは長閑な集落。そんなことも無く自宅へと辿り着く]
あり、がと、瑠璃。
……いつも、ごめん、ね。
[声のトーンを落とし、悲しげな表情になりながらも琉璃に礼を述べて。ちゃんと休むんだよ、などと言いながら去っていく琉璃を見送った]