『そうね。
お父様は、顔も怖いし、性格も悪いし、根性も捻くれるし、お年もアレだし……王子さまってカンジじゃないわね』
[たしか、母は、困った顔をしながらもそんな事を言ってただろうか]
『でも、お父様は母様の事を愛してくれてるわ。
それに、色々誤解されやすい人だけど、実際にはそれほど悪い人でもないと思うわよ。
えぇと………多分、きっと……悪い人じゃない、と良いわね………』
[とても幸せそうに言った後、視線を彷徨わせて言葉を濁してたりもしてたような気がする。
その後、使用人や村人から聞いた噂を総合すると、どうやら亡き先妻と息子の命日に、別荘を離れ村内の酒場で滅入りつつ飲んだくれていた侯爵に、酒場でバイトしていた母が説教をしたのがなれ初めだったとか]