[その時のイヴァン>>154はやはり屈託なく見えたけれど、
そんな彼だって、強いだけでもないだろうとは思う。
ニキータを亡くした時の彼の表情だって、見えはしなかったけれど――。
噂位なら聞いたことがある。昔の悲惨な事件のこと。
黙っていたのは、両親の居ない彼に纏わる暗い話に、
己の身の不遇をもまた口走ってしまいそうだったから。]
そう、だね。見せたい景色、沢山あったのに――。
なんて言ってももう、仕方ないけれど、ね。
[一度口を噤む前に、屈託なく返した心算の言葉。
その屈託なさも、口にした後悔の前では頼りない。
眉を下げて頷く姿に、こんな顔をさせてしまった、ということに。
向けられる眼差しの柔らかさに、ほんの少しだけ目を伏せていた。]