― 回想 ―
[店を閉める時間になっても、あの人は来なかった。
彼が来れば悦びの声を押し殺し抱かれる癖に、
来なければ来ないでほっとする。
伽矢の部屋と、彼を通す部屋を隔てるのは壁一枚。
いくら押し殺しても、情事の気配は伝わっているに違いない]
伽矢の休みも把握できてないなんてね。
……終わってる。
[顔を歪め、自嘲した。
作らなくていいと伽矢は言った。
けれど、作らなければ食事抜きで済ませてしまいそうで。
野菜炒めを簡単に作り、ラップをかけてカウンターに出しておいた]
『伽矢
ご飯は冷凍庫。チンして食べなさい。』