[微妙に口ごもりつつも了承を示す男と、何やら不満そうな黒猫の様子に、私は首を傾げて一人と一匹を見やる。
飼い主と風の男の昨夜の一幕を知らぬ身には、疑問符が浮かぶのみで。男の呟きへの感想は口にせぬ事にした]
『…では、エィリ殿と…どなたかが、ここで?』
[黒猫は言葉がわかったか否か、にゃぁと一声鳴くだけで、またうろうろと探しに行こうか]
『ユリ…殿が怪我を?』
『今日お会いした時には、お元気そうでしたが』
[目の前の男も重症だったと知らず、私は雷精の様子を告げる。
行くかと言う問いには、素直に首を振った。
彼の仔を連れて長く居るには、消えし場所たる此処は危なかろうと]