[ミハエルの父とは一度だけ、村に戻った後に会って話をしたことがある。
自分が彼の妻の兄であること、自分には前科があること。
彼はそれを知った上で接触を図って来たのだ。
接触の目的が何だったかまでは知らない。
しかしその時、クレメンスは妹と姪の前には姿を現さないことを宣言していた。
一生関わる心算は無いと、そう伝えたはずだった]
[それなのに、ミハエルの父はミハエルをクレメンスへと引き合わせた。
彼がミハエルを孤児院に連れて来た時、ミハエルが子供達と話をしている間にクレメンスは彼に問いかけた。
「どう言う心算だ」と厳しい表情で。
その問いに言葉は返らなかった。
彼はただ沈黙を貫いていた。
ミハエルを孤児院に連れて来た理由は何となく分かっている。
けれど、結局クレメンスは名乗ることなくその場をやり過ごした。
名乗ってしまえば姪に迷惑がかかると、そう思い込んでいたために]