─ 黒珊瑚亭 二階 五号室 ─
[居るはずの一人に数えられている事に驚く。
朱金の眸をぱちりと瞬かせてアーベル>>178に一つ頷いた]
お人好しめ。
そういう所もアーベルらしいけど。
[よほど執着のある相手でもなければ探さない。
大事なものを増やさない為に他との距離を保とうとしていた獣は
ゆらりと尾を振り彼の考えを心に留める]
――…ん。もう十分謝られた。
[くしゃりと毛並みは友の手により乱されるけれど
それがくすぐったくも心地よいから止める言葉は出ない。
笑う声音に、釣られるように眸は弧を描いた。
手が離れるとふるり、首を振るは獣が水を払う仕草に似る。
人の姿なら届く箇所も獣の姿では届かないから
毛並みを戻すための、ささやかな動作だった]