― 黒珊瑚亭 ―[閉ざされた扉を暫し見詰めた紅玉は瞼に一時閉ざされて、またひとつ呼気を吐き出した]……理解はできるが、納得はできない。とは云え、あの様子では逃れるも難しかろうな。[視線を落とせば亭主が配ったのだろう器>>213両手で包むように持ち上げ、唇を湿らせる様に啜る]……逃れようにも、船も出せぬが。[零す言葉は、器の縁に]