─住宅街・アヤメの家─
[殺し合う必要がある。覚悟しなければならないと。
それはつまり、此処にいる誰かに銃を向けなければならないかもしれないということで。]
……そんなこと、できるわけない…
[微かに震えながら小さく漏れた呟きは、誰かの耳に届いただろうか。
静かな部屋の中響いていた、かちゃかちゃとカップとスプーンが当たる音が途切れた刹那、アヤメが急に立ち上がってどうしたのかと驚いたが、駆け込んだ先を見て、あぁ…と。
かくいう自分も、これから先に待つ事実を受け止め切れなくて今にも倒れそうなのを堪えていたから。
けれど、自分よりもアヤメの方が心配で、立ち上がり閉められた戸に近付いて声をかけた]
…─…アヤメさん。
[名を呼んで、けれど何をしてあげられるのかわからなくて。
只彼女が落ち着いて出てこられるようになるのを待った。]