[呼びかけたのは、異界の海を統べる王。
自らを門となし、その力を最大限に引き出す、或いは本体を一時的に召喚する──言葉にすると容易そうだが、実際は諸々危険を伴う全力技。
そこまでする必要があるかないかはさておき、やらないと、という気持ちになっていたから、迷わず呪を唱えた。
呼びかけに応じ、周囲に広がるのは海色の煌きが織りなす波。
それが、全てを飲み込む大波と転じるより、僅かに早く]
……っ!? はやっ……!
[上空より真っ向翔けるは竜、否、竜を象る気の咆哮。
解き放たれたそれは、大波を貫き、文字通り打ち砕いて]
……っ!
[伝わる衝撃と、自身の呪の逆流による衝撃。
多重のそれから身を守るべく残った海色の煌きを周囲に集めるものの、打ち消しきれるものではなく。
煌めきが完全に散ると同時に、その場に崩れ落ちた。*]