[仄かに漂う薔薇の芳香が失せた後も、黒はその場に佇んでいた。
暫くして現れた小柄な影に向けるのは、普段通りの仮面の微笑]
フルトヴェングラー様。
どうなさいましたか?
[部屋の事を問われたのなら先程と同じ説明を繰り返すも、
目の保養と聞けば、意図を察してくすりと小さく笑いを零して、
客人を不思議がらせるだろうか]
オルゴールのお披露目は、晩餐会の時になります。
申し訳ありませんが、今暫くお待ち下さいませ。
[謝罪の言葉を紡ぎ深く礼をする一連の動作は機械的に。
灯りの作る薄ぼんやりとした影も、同様に傾いだ。
そうして客人とやり取りをしながら、執事は*主が訪れるのを待つ*]