―東殿・個室―
…、…?
[傍らで眠り続ける氷竜殿を視界に入れたか、仔は不思議そに首を傾ぐ。
それもそうであろう、幼子の記憶は腕に抱かれていたまでである筈。
四方やそのまま眠りに落ち、御手を煩わせたなど仔にはまだ理解出来ぬ。
私が此方へと視線を向けるに気付いたか、一度瞬きを零した仔はおはようと小さく口にした。]
「お早う御座います、お目覚めですか」
[こくりと頷いた幼子は暫しの沈黙の後、寝台から降りた。
翠の跡を残しながら、今し方まで自らが被っていた毛布を寝台からずり落とすと
氷竜殿へと暫くの格闘の後、漸く掛ける事に成功した。
…否、半分は肩から落ちているが、これが幼子の精一杯らしい。]