─ 黒珊瑚亭 二階 五号室 ─
[月色の尾はゆらりゆらり揺れる。
軽口を交わす時間を楽しいと感じているのだろう。
あの日あの時、呼び出されるまで。
正体を知られるあの時まで、いつまでも続くと思っていた時間。
けれど同時にいつか終わると不安を抱えていた時間。
アーベルの冗談>>252に獣は仄かに笑む気配を滲ませた]
愛してるよ。
[さらりと言ってのける。
自分が生きることよりも相手が生きることを望んだあの時。
父が最期まで守ろうとしていた母に向けた想いを愛と呼ぶなら
己が友に向けたものもその中の一つであると思えた。
視線は僅かに伏せてはいたが茶化すような気配はなく]
――…そうか。
[アーベルが目に関しての思いを口にすると相槌打つ]