[それを拾った事に、特に理由は無かった。ただ何となく気になったのだ。
随分と汚れていて、初めは何か分からなかった。
可愛らしい小花の髪留め。僅かに残った白い部分が、光を跳ね返していたらしい。]
カチューシャか、……イライダ姉さん?
[僕は化粧を施された妹を見ていなかった。
だから思い浮かんだのは、可愛らしい雰囲気の彼女の友達。第二候補の大人の女性がこれを付けるとは考え辛い気もしたが、他に思いつかなかったのだ。
よくよく見れば汚れは黒ずんだ血のようにも見えたが。]
後で訊いてみるか。
[2人とも遺体の傍に寄る機会があったから、その時は疑問に思うことは無かった。
先程落としただけにしては随分とこびり付いていることも、疲弊した頭では気がつかず。
拾得物を指先で摘まんだまま、暫しの間、物思いに沈んでいた。**]