─自宅─
[コーヒー用のミルクは、主に担当編集が使うために常備されていたとか。
黒江の、紅葉への評価には、僅か、苦笑めいたものを掠めさせるものの、それはすぐに掻き消え。矢継ぎ早の問いに、一つ、息を吐く]
一般認識されてる概要は、その通りだな。
季節外れに桜が咲くのが、発端。桜は、早ければ一晩、若しくは数日後には、元に戻っている。
桜が咲いている間は、何か、壁のようなものに遮られて外部からは中の様子は全く伺えない。
そして、その壁が消えた後、数人が原因不明の行方不明になっている、と。
[静かな口調で、話し始める。視線は開かれたテキストエディタへ]
で、だ。
その壁が何なのか、何故いきなり桜が咲いたのか。
そして、あの『桜花』がなんのか、は、はっきりとは言えん。
……俺の推測では、何かの監視者のようなものじゃないかと思うんだが。
わかっているのは、あれは、季節外れの桜の開花と同時に始まる……ある種の生存競争。
それを最後まで見届けるためにいるらしい、って事だ。