[選んだ衣装はどんなものだっただろう。
でもきっとお姫様のようなドレスなんて選ぶわけがなくて、動きやすい――そう、もしかしたらそれは一之瀬が舞台で演じた男物だったかもしれないし、町娘風だったかもしれない。
どんな衣装であっても似合わないものを身につけるはずもないから、それを見た桜子が言うのはこの言葉だった]
先輩、似合ってます、ね。
[小さく笑って告げた言葉に一之瀬はどんな返事だったか。きっと謙遜しただろうからくす、と笑うだけでそれ以上言葉を重ねることはせず]
お菓子も……ありました。
パソコン室に、戻りましょう。
[そう促して、演劇部部室から出て行く。
一之瀬がまだなにかやることがあるのならもちろんそれに付き合ってからだったけど]