…―――。
[美味いともなんとも云わず、表情も動かない男は、
料理を作る者からすれば作り甲斐のない人間であろう。
ただ料理を口に運ぶことを止めないことで、
本人は料理の味を賛美している気ではある。]
……嗚呼、夕食なら、良いよ。
[時折周囲に視線を巡らしたり、
リディの上げた声に微かに眼を丸くしたりしていれば、
また此処に来たいという少女の声が鼓膜から脳裏へ届く。
暫し、逡巡する間があり、結論のみを伝える。
そして、ふっと視線を上げると、
幼馴染が、折角の仕事を一旦断り、帰ろうとするところだった。]