[戦鎚の硬い感触が、戦闘スーツ越しに脚へ伝わる。
一瞬の硬直の間に、二人の視線が交錯した。
暗色の赤と対峙する瞳は、勢い衰えぬ炎のいろ]
お前の方も、そう柔には見えないけど、な!
[鎚が脚から離れると同時、顔を素早く引き一歩後退する。
肌に触れる空気で回転の動きを感じるが、鳩尾に迫る柄をかわすには重心の移動が足りなかった]
ぐっ!
[交差した腕を下方へ押し付けるようにして、柄の勢いを殺そうと試みる。
だが、後退と防御の迷いで僅かに生まれていた隙が、それを許さなかった。
両腕を軋ませ、先端が胸部に触れた所で、漸く柄の動きが止まる。
鎚の硬度と重量は、赤色の呼吸を一瞬止めるにはそれで十分だった]