[──その後、事件は収束して。
自分は、救い手の一人として讃えられた、けれど。
力の齎した結果、それによって喪われたもの。
その時に感じた痛みが、それを素直に受け入れる事を是とさせず。
一人、姿を消して彷徨った。
その果てに、この村までたどり着いた時には、心身ともに限界に達していて。
高熱に魘され、このまま命果ててもいいか、と。
そう、思った時に、呼びかけた声があった。
『大丈夫』と。
『あなた一人が苦しまなくてもいいの』と。
看病に当たってくれた老尼僧の声は意識に優しく響いて。
それが呼び込んだ安堵から眠りに落ち──目覚めた時には、記憶の一部を喪失していた]