― 空間のひとつ ―[睫毛の先が僅かに震え、その奥の水面の色を緩やかに晒す。周囲を撫でながら幾度か瞬いた瞳は、少しの困惑のいろを宿して何事も変わらぬ空間の一所に留まった]……やはり覚えがありませんね。そもそも私は宿で眠っていた筈なのですが。[そ、と持ち上げる褐色の指先。勢い良く振り下ろせば乱された空気が風と成る]夢と断じるべきでしょうが、この感覚は。[風を起こした指先を摺り合わせ、再び水面は周囲を巡る。数多の事象を収めた知識に繋ぐ糸口をと*]