>>316
自分から出て来たのはアナタよォ。
[期待するななんて言葉にも、返すのは甘い笑みだけ。
笑っていない薔薇色の瞳は、男の動きを逐一追う。
上段に構えられる刃。構える動きを僅かに合わせ、待ち受ける]
――チッ! 面倒な真似を!
[独特の語尾を延ばす手間も惜しんで、夜気を裂いて唸る氷の牙と、その後に来るであろう剣戟の間合いを計る。
交わせば構えて待った意味がない。ならば]
ハッ!
[短く吐く呼気は薔薇の香り。氷の牙を上から刃で叩き折る。
下ろした勢いを無理に捻っても、僅かな隙を突いて飛び込む白刃には間に合わない。上体を捩り、白い太腿を真横へ振り上げた]