[旅の空で死はそう遠いものではなかった。けれど一人置いていかれるという感覚は、この世が終わるかのような絶望感を味あわせてくれた。親一人子一人だった少年にはかなりきついものだった。
泣くこともできない時、触れてきた手は物理的に何度も払いのけた。柔らかい手は女性のものだったのか、子供のものだったのか。
それは無意識の下に仕舞い込まれて何も覚えていない。
ゼルギウスの無意識にある思いも知りようはなく。
その母を苦手とする意識とはまた別に、結局いつも距離を保ったままになる同い年の青年。
会釈には同じく会釈を返して、その時もそれだけだった。>>327]