俺の声が聞こえるか、アル。
[意識の無い者に呼びかけるのは、初動の基本だが。
男の胸の内に、医者としての務めという思いなど無い。
握った左手の、指先の微かな動きを感じる>>313と、顔を上げて両親を見上げた。
言葉無くとも男の表情から察した父が空いている右手を取り、母もそれに倣うのを見て、頷き]
俺だけじゃない。
親父も、お袋も、ここに居る。
[指先の動きが声に反応してのものか確かめる為、呼びかけながら握る手に意識を向けると温かな温もりが更に顕著に伝わってきて。
このまま目覚めなかったらこの温もりも失う事になるかもと過ぎるだけで、不安がより増す。
この温もりを失ってしまったら、男はもう、前には進めなくなってしまう]