― 広間 ―
[男は広間から動かず。
広間に置かれていたワインを口にしていた。
広間からは庭の騒動は見えないが、戻ってきた人たちを見れば結果が分かるだろうと、自らが動くことはせず。
それからどれぐらいの時間が過ぎたのか。
広間に置かれていたワインはすでに半分以上へっていた。
男は何も知らず、知ろうともしない。
庭で、人狼が死んだことも。
赤い声の囁きも。
執事の思いも。
死んだものたちのことも。
ともに生き残った女性のことも。
なにも考えていないような酒びたりの時間をさえぎったのは、広間に戻ってきた執事の声>>306]