聞こえて、いるんだな。
[呼びかけに応じて動く指先を感じ、握る手の力が強まる。
声が届いている、そう解っただけでも安堵の息が零れる。
けれど目覚めぬままの彼女に、不安が消えることなど無くて]
アル。
俺は、『魔』と『祈り子』と話をしてきた。
それで、気が遠くなる程長く一緒に居た者同士でも、言葉にせねば伝わらんものがあると教えられた。
俺はお前に伝わっているものだと思って、言葉にしてこなかったことが、沢山ある。
お前も、俺や親父達に言ってこなかったこと、言えなかったことがあるだろう。
それを話そう。
お前の話を聞きたい。俺の話を、聞いて欲しい。