……っ、ユーリー、[甘い匂いが近づく。烏色の双眸の奥、紅が揺らめく。黒銀の狼が小さく唸るのを、手で抑えて止めた。もう片方の手で、自分の胸元をぎゅっと握る。赤い色に吸い寄せられそうになるのを、必死で、抑えて] 俺、… …人を、悲しませたいわけじゃない。 だから勝ちたい、って、思う…頑張りたい。[赤い月の本能の侭に今を誤魔化しているように見えるだろうか。――それとも、本気の言葉と見えるだろうか。それは判らないけれど]