[深夜。昨夜と同じように、わたしは音も無くベッドから身を起こすと、窓を開けた。]
[吐いた息が白く染まって、そのまま凍りつきそうな寒さ。]
[でも、今のわたしの火照った身体には、それが気持ちいい。]
[窓を伝い、屋根へ駆け上る。音も無く、白い幽鬼のように。]
[屋根の縁を、腕を左右に広げて踊るように歩く。]
[月の無い夜、誰にも何も見えはしない。]
[でも、今のわたしの眼にとっては別。]
[目指す部屋の上についた。耳をそばだてる。人間の耳には何も聞こえはしない。]
[でも、今のわたしの耳なら、中の人間の寝息を確かに聞き取れる。]
[窓を音を立てないよう注意して開くと、中に滑り込む。]