[エーリッヒが何か拾うのが見えた。
声を掛ける最後の機会も、逸してしまう。
彼の手にあるそれが男の探していた物であったせいだ。
鞘の行方はギュンターと襲った者しか知らぬだろう。
そんな風に思っていたから、何故という疑問が頭をめぐり
彼の名を呼ぶことが出来なかった]
―――…、気づいてたんだ。
[軽く肩を竦め、振り返るエーリッヒ>>4:*9の前に姿を現す。
月明かりの下、見ゆる翆であるはずの彼の双眸が紅に輝く]
俺はキミと話がしたかった。
あの眼差しの理由が、知りたかった。
キミは―――…、
[月のいとし子なのか、と、問う言葉は声にならない。
言ってしまえば引き返せないのが知れた。
何より、違うと思いたかったから]