―― レイスとキリルの家 ――
あ、ごめ……
[無理矢理開けたみたいな形になってその拍子に香袋を落としてしまった。彼女が後ろに退くのを見れば、それを支えようと手を伸ばす]
[さっき彼女が扉越しに何かを言っていたのはきっと、扉に阻まれてしまって聞こえなかったけど]
ごめん。キリル。
[獣避けの香袋。キリルへ、と小さくリボンの宛名がついている。
それは触ると少しくしゃりとした感触がある]
[中をもし覗くなら、小さな走り書きで
『これは獣避けだけど、もしこの匂いが酷く嫌いだったらごめん。その時は俺の家に来て。一緒に逃げよう。しばらくは苦労をかけるけど、色々な意味で衣食住には不自由させないから』]
[そんなメモが、一つだけ。念のために入ってた]