カルメンさんも、髪括りますか?
[過保護や過干渉の自覚は、流石に男にもあって。
心配そうに妻を見詰めていた眸は、ギュンターの表情を受けて、ギギギっと努力を要した様子でカルメンに移る。
温もりを離した手は、この機会にと、風に晒される長い銀糸を束ねるに使われていた。
イレーネとギュンターの話が終わるまでの間。
カルメンとは互いの長い髪に関しての会話を交わしただろか。
ゼルギウスが髪の毛を伸ばしているのは、少しでも日光を遮ろうとして、などと。]
あ、お帰り!
[カルメンと話をしながらも、どこかそわそわしていたゼルギウスは、イレーネが戻り手を取ってくれたなら、留守を預かっていた犬のように尻尾を振る態で、妻を迎える言葉を紡ぐ。
その後、思い出したように紅を去ろうとするギュンターに向けて、礼を一つ。老体の後姿に、何を思ったのか首を傾げ、妻に尋ねるのは何のようだったのか?と。]