[横合いから投げかけられる、主の声。
執事は顔を上げて、柔らかな微笑を向ける]
はい。
なんでしょう、ヘル・オストワルト。
[聞けば、オルゴールは自分に任せて欲しいとの事。
使用人は宴の後片付けが大変だろうからとは言うものの、
やはり、今宵ばかりは浸りたい思い出があるからだろうか]
わかりました、お任せ致します。
ですが、……くれぐれもお気をつけて。
[――予感めいたものは、あったのかもしれない。
けれど主の意思を尊重し、敢えてそれを口にする事はなく。
敬礼をすると、執事は一足先に、小ホールを後にする。
白いテーブルの前に佇む、老齢の主人を置いて]