[無言で立ち上がる。 自分の腕まで数歩の距離が非常に大儀だ。 岸に転がる自分の腕を見下ろし、 赤い勇者へと、半眼を一度、向けて] 【プレジエイド】[もう一度、呪を唱える。 泉に沈める前に刻んだのと同じ黒い文様が腕に浮き上がる。 違うのは、そこにほの赤い人の手形が付いていることで]【我に力を貸せ】[呪を繋げば、そこからほどけるように、腕は黒い霧になって一度宙を舞い、自分の左肩に吸い込まれるように消えていった]