―村の通り―
[ほんの少し離れていただけなのに、戻った時の夫の笑顔に微か苦笑が混ざる。
それを可愛いと思ってしまう辺り、自分も大概なのだと思う。
傍にいたカルメンにも、お待たせしましたと断りを入れて、
夫の口から出た言葉には、やはり困惑を示したままだった。]
ヴァンパイアに人狼……ねぇ。
[確かに銀にはそういった類の物を退ける力がある、と言う事を、
まだ文字が読めない幼い頃、夫自身から読み聞かせてもらった覚えがある。
とはいえ全て御伽噺の中の話だ。一般的には。
瑠璃を柄にという夫の言葉に、困惑は微笑へと変わり。]
ええ、そうするわ。
雛形はあった筈だから、そんなに作るのに手間はいらないだろうし……。
[そんな事を言いながら、再び彼の手をとり促されるまま歩き出す。]