『喜んで囚われるものなど、そう居るまい』
[だから再会しそうなら逃げる。その為にも、人としての名も教えたのだ。同じなのも当然だろうと苦笑して]
『コエは届いたが同胞とは異質な、人の姿をしたもの。
本人は“魔物”と言っていたな。元人間、だとも。
嫌な予感がしたから排除しようとしたんだが……止めを刺すより前、散るように消えた。
此処と同じで不可解な存在だ。考えても始まるまい』
[もう消えてしまった香を握ろうとした手に視線を落とした。
花散るようなその消失に、癒えないままの見えない傷が疼く。
説明するコエも自然と低く重いものだったのだろう]