― 回想・死の間際 ―
[ベアトリーチェの看病、その後のハンスの登場と死、さらにローザの看病と、疲れていた筈なのに。
夜、ベッドに入っても中々寝付けず、幾度も寝返りを繰り返した末に、少しだけ散歩をしようと外に出た。
ひとりは嫌い。でも他の人たちの眠りを妨げる気もない。そういうときは、何となく夜空を、星を見上げる事が多い。
無数に煌めく星を眺めていると、なんとなくひとりではないような気分になれるから]
……あれ?
[自分の呼吸の音くらいしか聞こえない、静かな夜。
屋敷の方から、微かに扉を開け閉めするような音が聞こえた気がして、白い息を吐きながら振り返れば。
夜の闇に溶ける様な、大地を覆う積もった真白と正反対の色をした人影があった]
ナタちゃんも、眠れないのかな。
[こちらに気付いているのかいないのか。ナターリエはふらふらとどこかへ歩いていく。
ひとりが嫌いな娘は、彼女に追いつこうと雪のなかをほてほてと歩いてついていった。
それが、自らの寿命を縮めることになるとは知らずに]