……俺、さ。
リル姉みたいに、手先器用なわけじゃないし。
テレーズみたいに話したり聞かせたり、っていうの、どっちかっていうと苦手だし。
だから、お前とかサリィみたいに店に立って人と接して、ってのは出来なかったし。
ユーリやノクロみたいに新しいもの考えたり、ミレイユとかミケルみたいに作ったり描いたりとか……ばっちゃんみたいに、薬草扱ったりとかも、全然できなくて。
ほんっと、本しかなかったんだよな、昔っから。
[ほろ、と零れて落ちるのは、今までは抑えていた内側の想い]
……だから、他にはなんにもない、と思って。
読んで、写して、綴って、っていう『務め』果たすことだけ考えて。
……それが、俺だからできること、残せるものだった、って気づかなかった。
こっちで姉に言われるまで気づけなかった。
それでも、仕事、喜んでもらえるのは嬉しかったし。
……読んでみたかった、残して欲しかった、って言われるのも嬉しいんだけど、さ。