(あ、これはダメっぽい)
[何が起きているのかを理解するより先に、噛み付かれた場所の痛みと感触から、自分の命が失われる事を理解した。
薬の勉強をする過程で、応急処置などについても教わっていたから、それがどれだけの深さの傷なのかもわかってしまった]
(でも、なんで? ナタちゃん………)
[痛みの中、意識が薄れ行く。
最後に思ったのは、そんな疑問。そして……]
(ああ、でも……死ぬときにひとりぼっちじゃなくて、よかったかも)
[寂しがり屋の娘は、薄れ行く意識の中で、そんな事を思い安堵していた。
ひとりきりで寂しく死ぬのではなく、見知った人がいる。
いつも優しいナターリエが傍に居るという事に、そのナターリエに殺されるというのに、感謝するような感情を胸に抱いたまま。
髪と似た色の瞳から、光が失われていった*]