―暫く前・村から離れた都市―
[老婆が一人、町外れの建物を訪れた。
グルリと囲む高い塀に入口を見張る門番。
装飾入りの鉄柵がついている窓。
老婆は門番に一枚の木札を見せると中へと入ってゆく]
「叔母様!」
[居間へ通され暫くすると、一人の中年女性がやってきた。
嬉しそうに老婆に駆け寄り抱きついてくる]
「お久しぶりです、叔母様。
でもまだあの人は帰ってきていないのですよ。
この子が生まれる前にちゃんと帰ってきてくれるのかしら」
[女は全く膨らんでもいない腹を撫でながらクスクスと笑う。
老婆は女の頭を撫でる。その真白な髪を、ただ慈しむように]