―二階・ナターリエの部屋―
[扉を叩かれ、呼ばれて隣の部屋へ移り。
勧められるままに腰掛けたのは寝台の方だったか。
人間、驚くと声が出せなくなるのだったと思い知った。
呼吸すら止めて。背でも叩かれないとそのまま忘れていそうなほど]
な、ナータ。
まだ誰にもそれ、言って無いんだよね?
[ようやく出せた声は焦りと戸惑いと恐れに満ちたもの。
嘘だと言いたかったけれど、それなら他の人にという話になったら]
この先も誰にも言わないで。お願い。これは絶対に。
もしも人狼に知られたら、真っ先に狙われてしまう。
ねえ。お願いだよ。
[無機質にも見える菫色に混乱して、ナータに詰め寄ろうとしたのは、もしかするとクレムに止められたかもしれない。
淡い笑みで我儘というのには、何度も首を振った。
それはナータのせいじゃ*ない*]