……不思議なもの、ですね。
何も見えないから、何も見せなかった相手と。
いつか、完全にいなくなるのがわかっていた相手が。
……いなくなって、こんなに気が滅入るんですから。
[やや、俯き加減に綴られる言葉。
それは、滅多にない心情の吐露。
淡々とした口調とは裏腹、俯き加減の表情は、冥さを帯びていた。
喪失による、痛み。それは、自身が思っていたよりも、重苦しいもの。
俯く様子に何か感じたのか、父は短く名を呼んで、肩に手を置いた]
ん……大丈夫、ですよ、父上。
……おかしな気は、起こしません。
生あるならば、それが尽きる時まで生き続けるのが、私の在り方ですから。
それに……。
[途切れる言葉。父は静かに、「それに?」と繰り返し、先を促す]