……ふん、こんなもんか。
[『調査』を終え修道士の首元から右手を離した]
[支えを失った修道士の身体は力無くまた壁へと凭れかかる]
[その場に立ち上がると、咥えていた手巻きタバコを右手で摘み]
[ふ、と短く紫煙を吐いた]
……死の差し迫ったお前に一つ冥土の土産を聞かせてやろう。
思想と言うものは人の数だけその形があってな。
人はいつ生まれ、いつ死ぬのか。
その概念もまた捉え方でいくつかの違いがある。
一つ目は肉体的な考え方。
この世へ肉体が生まれ出づるを生とし、肉体が滅ぶことを死とするもの。
二つ目は精神的な、言わば霊魂を基軸とする考え方。
これは輪廻思想の類に良く見られる。
肉体が滅んでも魂は消えず、次の肉体へと宿り再びこの世へと降り立つと考えられるもの。
魂が輪廻する限りは死ぬことは無く、魂が消滅して初めて死んだと考えるらしい。