─ 水晶龍の追憶 ─
『…………』
[収束?していく事態の中、水晶龍は己が盟約者を見つめて尾をはたり、振る。
今でこそ澱みなく言葉を綴り、態度も傍若無人、物怖じとは無縁ではあるけれど。
水晶龍が初めてその存在を見出した時は、今とは似ても似つかぬ……というか。
今からは、想像もできないような有様だった]
[強すぎる力を持ち、その代償として、健常な体と言葉を奪われた状態で生まれた、騎士の国の世継ぎ王子。
綴る言葉は片言で、無意識に呼び寄せ、或いは引き寄せた魔獣の仔らに囲まれた子供は、それでも。
母たる王妃が健常の頃には、穏やかな想いに護られていた。
水晶龍は、その様子に惹きつけられるものを感じつつ。
同時に、強大すぎる力への畏れと。
同じく子供を見つめる『何か』に気づくが故に、その元へと向かうのを躊躇していた]