─ 早瀬 ─[早瀬の腕は跳び込んだ銀を捕らえ、うねりの内へと抱く。その中で、呼ぶ声を聞きながら。銀の獣は、夢と現の狭間を彷徨う][銀の獣が目覚めたのは、幼い頃の満月の夜。誰かが呼んでいる気がして。何かが歌っているような気がして。彷徨い出た森の中で、コエを聞いた。偶然の作用。旅する月のいとし子のコエ。それは眠っていた銀の獣を目覚めさせ、名を与え][その数ヵ月後の雪嵐の夜、疼いた衝動は、幼い獣に最も近しいものを喰らわせた]