『…………』
[追憶から一時立ち返り、改めて盟約者を見る。
姿を現してから、盟を交わすまでの時間は、さほど長くはなかった。
盟約の後は、少しずつ、言語障害も解消され周囲との意思の疎通も可能となったのだが。
それが逆に、周囲の感情を、ただ疎むだけから、畏怖へと変える事となったのは、皮肉な事。
言葉が不自由だった頃に向けられていたものの事もあり、周囲との距離感は言葉で言い尽くせるものではなかった。
それでも、かの漆黒なる『書』と邂逅するまでは。
比較的、穏やかな時間が過ぎていたのは──間違いのないことだった。*]