[逃げた先は、管楽器。
フルートを奏でるのも、嫌いではなく。
真摯に打ち込むものの──でも、同時に。
このまま音楽を続ける事に、ほんの少しだけ疑問めいたものも生じて。
そこから始まったのが、練習サボり。
幼い頃から常に傍にいた、風の誘うままに外に飛び出し。
通うようになった街外れの空き地で出会ったのは、街では見かけぬ金髪の少年だった。
銀色のハーモニカを吹きこなすその様子に興味を抱いて声をかけ。
言葉を交わすうち、親しくなった。
……住まう場所が違うのは、気づいていたけれど、でも。
自分とは違う、自分にないものを持つ者。
興味は尽きず。
いつの間にか、彼の住まう領域へ、踏み込むようになって行った]